まるいしかく

日々の思考や趣味のことを。

香道体験してみた。

2019年からはまりだしたお香。

なぜはまったかは、メインのブログでも今後書いていくのだが、

母の入院のサポートをする中で、自分の精神の安定を図るものを模索し、

お香に出会うこととなった。

 

始めは「hibi」さんのマッチタイプのお香。

駅ビルの雑貨屋さんで売っていて、手に取りやすかった。

マッチのように箱を擦って着火させ、そのマッチを専用のシートの上に置き、

次第に灰になっていき、香りを楽しむことができるとてもお手軽なお香だった。

しかも、10本入りとかで、お試しには持って来いなベストな容量。

お洒落なパッケージで気分も少しあがる。

 

 

始めはこんなに簡単なものから始まった。

次は都内のお香専門店を探して「Tokyo kodo(東京香道)」さんの専門店へ。

 

あのお香が持つ、歴史的でどこか懐かしい香りが好きで。

お香専門店という空間は幸せすぎる空間だった。

自分の好きな香りはどのお香から発されているのか探したり、

焚いてみると思いもよらない香りに変わったりと変化も楽しい。

 

お香については全然詳しくなかったけど、

自分が心地よいと感じる香りを選んで生活に取り入れてみた。

お香を買うっていう生活もなんだか大人っぽくて、見た目上豊かな生活風。

 

それからというもの、都内にもたくさんあるお香専門店を訪れ、一期一会の出会いを大切にして、気に入った香りとともに帰宅するようになった。

 

そして、その頃「香道」という道があることを知って、

長年、いつか体験してみたいと思っていた。

 

2020年以降は、新型コロナウイルスの蔓延で、寺社やお香専門店で催されていた香道体験は中止されていることが多く、機会を失ったまま2年ほど経過していた。

 

20代最後の年となる今年、後悔のない生き方をしようと思い、挑戦したのだ。

 

先日ついに念願の香道体験をすることができた。

 

都内でもいくつか香道体験をすることができる施設はあるが、

今回私は谷中にある「瑜伽庵(ゆかあん)」さんで体験をすることにした。

 

瑜伽庵さんは普段は骨董品のギャラリーをやりつつ、茶道や香道の体験を行っているそう。

決め手は骨董品も好きだったことと、形式ばった体験ではないとのこと。

 

初めてのことに挑戦する感覚に久しぶりに向き合う。

楽しみにしていたことだから、不安より期待が上回っていた。

 

予約時間の10分前に到着すると、91歳になるおばさまとそのお孫さんが出迎えてくださいました。

 

玄関を上がって、掘りごたつのようなテーブルに座って、

香道の歴史的背景や歴史上の人物に照らしたエピソードトークなどを披露してくださり、大変興味深かった。

 

私も、お香に興味を持って改めて知ったのだが、

平安時代などの書物、万葉集古今和歌集源氏物語の中に香木や香りに関する描写が登場する。

想いを寄せる人に香りとともに恋文を送ったとか。

香木は、種類によっては所有することで権力を表すことに使われたりしていたそう。

時の権力者しか知らない香りがあったんだな。

現在は、東大寺正倉院に「蘭奢待」として保管されている。

蘭奢待ってよくみると・・・わかった方いるかな?(笑)

 

 

そんな香道にまつわるお話を聞きながら、聞香を行うお灰の準備の方法やお作法を実演して説明してくれた。

「香」を「聞」くって言葉、お香に出会って初めて知った言葉。

香りを聞くって漠然と素敵だなって思った記憶がある。

聞香とは香を鑑賞することで、静かに心を傾け、香をゆっくり味わうという意味が込められているそうだ。

 

そして、今回は組香という、複数の香木を和歌や物語の主題によって組み、香を聞き当てる遊戯をすることになった。

何種類かの香木を聞いて、どの香がどの香木かを当てるというものだ。

 

一通りの説明が終わると、奥のお座敷に移動して、組香の説明を受ける。

今回の体験では万葉集から、

 

「ゆきのへに 照る月夜には 梅の花

       折りて於くらむ  はしき子もかな」という證歌 

 

家包香(いえづとこう)という香りに仕立てて、組香を行うことに。

 

和歌に触れるのは大学受験ぶりだったので、読めるか不安になる始末(笑)

でも香と和歌を合わせて楽しむなんて、なんて優雅な遊びをしていたんだ先祖様。

 

 

組香で使用する香木は「白檀」・「沈香」・「加羅」の三種類でした。

体験では当てやすい簡単な有名な香木を使用するそうです。

宗家のお稽古などでは10種類とか30種類を聞き分けるというから驚いた。

 

お姉さんのあいさつで組香が始まり、最初に2種類練習で聞香を行った。

香りを覚えて、香りを言葉で表現して記録しておく。

どんな香りだったかを自分なりに聞きわけるためだ。

 

練習を行ったのちに、本番の3種類の香木を聞香した。

 

練習で聞いたときとはまた違う香りのように感じる。

自分のメモを頼りに記憶と対話するが、目の前にある香りが自分を惑わせてくる。

香りだけに集中する時間、充足していた。

 

 

私の他には中年くらいの男性2人が体験に来ていた。

 

私は真面目に「焚火の香り」とか「甘い香りのあとに少しの苦み」などつまらない記録をした。

男性らは「さわやかじゃないサワデー」とか「甘い紹興酒」だかと表現していてとても粋だなと感じた。

表現って自由だなって。香りの表現て既存の表現で表さなくてもいいんだって。

 

性別や年齢関係なく、日本の伝統を楽しむという貴重な時間となった。

 

組香では最後に答え合わせをするのだが、無事に全問正解することができた!

あたると案外嬉しいものだった。

普段のお香とは全然異なる香りを出す香木。

香木本来の香りを知ることができた。

 

初めての香道体験であったが、香道にも流派があるからどこも同じではないのだが、

楽しく教えてくださる「瑜伽庵」さんでの香道体験はぜひおすすめしたい。

なんでも、91歳のおばさまが本当にパワフルでエネルギーをもらえる。

 

素敵な空間、時間を過ごせたことに感謝だ。